4.タイ東北部の知識

東北部独特の仏教建築様式や伝統文化や先史時代の遺跡が残る「北の町」ウドーンターニー、90年代に恐竜の化石が発見されたことで話題を集めたコーンケーン、シルクや陶器の伝統工芸やクメール王朝(現在のカンボジア)時代の貴重な遺跡群が残るナコーンラーチャシーマー(通称コラート)、東はラオス、南はカンボジアに接するムーン川沿いのタイ最東部の都市ウボンラーチャターニー(通称ウボン)に関する基礎知識を学ぶことができます。

ご登録頂くと、学習コンテンツ追加のお知らせや、修了テストのお知らせ等をメールでお届けします。

大いなるメコンと共に独自の伝統文化を育んできた
タイ東北部イサーン

タイ東北部はイサーンと呼ばれ、タイのなかで最も広大な地域です。コラート高原一帯からメコン川流域にかけてタイ国土の3分の1を占めており、北イサーンと南イサーンの2つのエリアからなります。古代の農耕文明やその後のクメール王朝時代の遺跡が各地で発見されるなど、奥深い歴史性とラオスやカンボジアからの影響を受けつつ育まれてきた独自の伝統文化が魅力です。
イサーン

趣の異なる「北イサーン」と「南イサーン」

広大な大地を有する北イサーンは、経済や教育の中心となるコーンケーンをはじめ、先史時代の遺跡が発掘されたウドーンターニー、タイ・ラオス友好橋で有名なノーンカーイ、黄金の涅槃像が奉られているワット・プー・カオのあるカラシンなどからなります。一方、南イサーンは、東北部の玄関口と言われるナコーンラーチャシーマーやブリーラム、スリン、ウボンラーチャターニーからなります。この地方はタイシルクの生産地として知られるほか、パノムルン歴史公園やピマーイ遺跡などのクメール遺跡群が点在しています。
タイシルク

世界中から観光客が訪れるイサーンのお祭り

イサーンでは独自のスタイルを持つお祭りやイベントがあります。代表的なお祭りはヤソートンで開催されるブン・バンファイと呼ばれるロケット祭りです。豊穣をもたらす豊かな雨を乞う儀式として催され、埼玉県秩父市とも交流があることから多くの日本人観光客が訪れます。ほかにも、ルーイ県ダンサイ郡で開催される有名な仏教説話をもとにしたピー・ター・コン・フェスティバル、ウボンラーチャターニーの郷土職人の技術と宗教的な捧げ物の展示が見どころのキャンドル・フェスティバルなどがあります。

なかでもカオプン・ブンパウェット・フェアは盛大なお祭りで、毎年3月の第1週末にローイエットで行われる仏教得度式です。期間中は、僧侶による説法をはじめ、パレード、郷土芸能が披露され、東北地方の麺「カオプン」を食べて祝います。また、先端に黄金の飾りを持つ57もの仏塔がナコーンパノムのシンボルとなっているプラ・タート・パノムでは、1月から2月にかけて7日7晩の祭りが開かれます。ほかにも、スリンでは毎年11月に200頭を超す象たちが集まるスリン象祭りが開催され、カラフルにお化粧された象のパレードを一目見ようと世界中から多くの人々が訪れます。
プラ・タート・パノム

スパイシーながら素朴な味わいのイサーン料理

イサーン料理は全体的に唐辛子の辛みが強いのが特徴です。料理には野菜やハーブの盛り合わせが付くことが多く、代表的なものに「ソムタム」と呼ばれる青いパパイヤのサラダがあります。ほかにはビールによく合う豚肉の炙り焼き「コー・ムー・ヤーン」、もち米を混ぜた腸詰の豚ソーセージである「サイクロッ・イサーン」、「カイ・クラター」と呼ばれるフライド・エッグが有名です。
ソムタム

紀元前に遡る先史時代の遺跡群が点在する街
ウドーンターニー

ウドーンターニーは、バンコクから北北東へ約560キロメートル、サンスクリット語で「北の町」と名づけられた都市です。タイ東北部ほぼ全域に広がるコラート高原の北側に位置し、農業地帯に囲まれた商業都市の中心地である一方、数多くの先史時代の遺跡が残るなど、古代からの歴史が刻まれてきた地でもあります。
プー・プラ・バート歴史公園

高度な陶器技術を育んだ先史時代の墳墓遺跡

1992年に世界文化遺産に登録されたバンチェン遺跡は、紀元前2500年から2000年にさかのぼるといわれる先史時代の貴重な遺跡です。バンチェンの人々は、国陶、文様陶器、彩色陶器という3つの時代に分けられる稲作・農耕文化をもち、陶器技術も発達したと言われています。隣接するバンチェン国立博物館には貴重な出土品だけでなく、発掘の様子を再現したジオラマなども展示されています。
バンチェン遺跡

全長9キロメートル、歴史を刻む神秘的な奇岩群

プー・プラ・バート歴史公園は、ウサの塔と呼ばれる奇岩で知られる全長9キロメートルの細長い歴史公園です。浸食作用によって自然にできた、不思議なバランスで折り重なる巨大な岩々は、先史時代に人々の住居として利用され、岩肌には当時の壁画や人々の手形などが残っています。またプー(山)、プラバート(聖足跡)という名にもあるように、9~11世紀には仏教の祭事を執り行う場としても使われ、風化した仏像や巨岩を取り囲んで立つ結界石などが神秘的な雰囲気を醸しています。12キロメートル南方にある小さな寺院、ワット・プラタート・プラ・プッタバート・ブアボックには、仏足石が奉られています。
プー・プラ・バート歴史公園

クンパワピー郡の中央に広がる紅い蓮の海

ウドーンターニーの中心部から南東へ約43キロメートル、クンパワピー郡のほぼ中央に、紅い蓮の海(タレー・ブア・デーン/正式名:ノーンハーン)と名づけられた湖が広がります。総面積約36平方キロメートルの広大な湖では、12月から2月にかけての早朝、水面が蓮の花で埋め尽くされ、その名の通り湖が紅く染まる幻想的な景色を見ることができます。満開の時期にはボートも出ているので、湖を周遊することも可能です。
タレー・ブア・デーン

恐竜、手織りシルクなど新たな観光地として注目を浴びるコーンケーン

タイ東北部で2番目の大きさを持つ県コーンケーンは、世界基準のマラソン大会が行われるなど、南イサーンの経済、文化の中心として発展してきた都市です。1994年に恐竜の化石が発掘されて以降、このエリアからは次々と化石が発見されています。また、キング・コブラ村や亀の村などユニークな集落をはじめ、マットッミーと呼ばれる手織りシルクが有名で、近年は観光地としても大きな注目を浴びています。
コーンケーン

約1億3千年前の恐竜化石が発見されたプーウィアン国立公園

先史時代の壁画が数多くあり、ジュラ紀の恐竜の化石が発見されたことで知られるプーウィアン国立公園は、325平方キロメートルの広さを有し、約1億3千年前のものと考えられる恐竜化石や足跡化石などが1976年に発見されました。公園から約3キロメートル離れたところにはプーウィアン恐竜博物館があり、恐竜の骨格のほか、実物大の恐竜がいるジオラマが展示されています。また公園内では発掘現場も見学できます。
プーウィアン国立公園

ステンドグラスの窓やモザイクアートが施された寺院

ワット・トゥン・セーティーは、ヤム・ダング僧侶の求めたダンマ(Dhamma)の黙想場所をイメージして建立された寺院です。建物は比較的新しく、ステンドグラスの窓やモザイクアートが施され、優雅で煌びやかな雰囲気が漂います。
ワット・トゥン・セーティー

タイで最大規模の恐竜化石が集中するカラシン

カラシンは、バンコクから519キロメートル離れた所にあり、ほとんどが山地で覆われた都市です。近年では恐竜化石がいたる所で発見され、タイで最大規模の発掘エリアと言われています。また、隣接するサコンナコーンとの県境にはプー・パン国立公園があり、一帯に広がる山林を保護しています。なお、北部には1963年に建設を開始し、1968年に完成したラムパーオ・ダムがあります。

タイ最大級のプー・クムカオの恐竜化石

プー・クムカオの恐竜化石(シリントーン博物館)は、タイで最大規模の恐竜化石が集中する場所です。市街からハイウェイ1227号を30キロメートル、右折後ワット・サッカワン方面へ1キロメートルの所にあります。現在、鉱物資源局は全て揃った骨格がはっきりと見られる数エリアを発掘しています。ほとんどの化石が大きく、首長、草食、竜脚類のもので、これらの化石は約1億3千年前に生息していた恐竜と考えられています。

左側を下にした珍しい涅槃像ワット・プー・カオ

ワット・プー・カオは、サハットサカン区から7キロメートル離れた所に位置し、自然に囲まれた静かで落ち着いた寺院です。ここに奉られている黄金の涅槃像は通常と違い、左側を下にしている大変珍しいものです。
ワット・プー・カオ

戦後唯一残っているクメール式の仏塔プラ・タート・ヤークー

プラ・タート・ヤークーは市街地から約20キロメートルの所に位置し、この地域で戦後唯一残っているクメール式の仏塔です。周囲に建っている石柱には仏教の教えや逸話が彫り込まれており、毎年4月には雨の恵みを願う儀式が行われます。

ラオスとの国境に位置するノーンカーイ

ウドーンターニーの北に位置するノーンカーイは、ラオスへの玄関口として知られています。メコン川に1994年に完成した国境の橋・タイ・ラオス友好橋では、ラオスのビエンチャンまで陸路で渡る事が出来ます。また、ノーンカーイから対岸のラオスに渡るフェリー乗り場・ターサデット船着き場には、アーケード式のマーケットがあります。以前はラオスの布製品や銀を売る店が多く並んでいましたが、近年は中国製の食品や生活雑貨用品を売る店が増えてきています。ラオスを眺めながらメコン川沿いの遊歩道を散策できる、国境の街でしか味わえないローカルな雰囲気が楽しめます。
ノーンカイ

クメール遺跡が残るイサーンの玄関口
ナコーンラーチャシーマー

バンコクから北東へ約259キロメートル、イサーンの玄関口に位置するナコーンラーチャシーマー(通称:コラート)は、奥深い歴史を有する地域として知られ、ピマーイやパノムワンなどクメール王朝時代の遺跡群、バーン・プラサートで発掘された先史時代の墳墓などが有名です。一方、カオヤイ国立公園の豊かな森林が広がる西部は、数々の美しい滝やサイチョウなどの希少な野鳥が見られ、トレッキングやバード・ウォッチングなどにおすすめです。
ナコーンラーチャシーマー

クメール王朝をつなぐ遺跡群ピマーイ歴史公園

市内から北東へ約60キロメートル、クメール遺跡の流れを汲み、アンコールワットの原型と言われるのがピマーイ歴史公園です。11~12世紀ごろタイ東北部一帯に勢力を拡大したクメール王朝により、石造神殿が建設されました。堀に囲まれた565メートル×1,030メートルという大規模な敷地、正面が南のクメールの王都に向いていたことなどから、当時タイ東北部に点在していた小国家とクメール王朝をつなぐ宗教的な結節点だったと考えられています。回廊には4つの門があり、神殿内の中心部にはクメール風の顔立ちをした仏陀やヒンドゥー教の神々の姿が生き生きと彫られています。
ピマーイ歴史公園

野生動物と野鳥の宝庫カオヤイ国立公園

県西部には、ユネスコの世界自然遺産として指定されたカオヤイ国立公園が広がります。全体の約85パーセントが森林におおわれている園内は、高低差約20メートルのヘーウ・ナロックをはじめ、ヘーウ・スワット、パー・クルアイマーイなど数多くの滝によるダイナミックな景観が広がります。また、野生の象やトラ、サンバー、ホエジカなど67種類以上の哺乳類動物、希少なサイチョウやジアリドリなどを含む320種以上の鳥類、東南アジアならではの美しい蝶など約216種以上の昆虫類が生息していることでも有名です。
カオヤイ国立公園

ワイナリーや牧場など農業観光が楽しめるパークチョン

カオヤイ国立公園に隣接する高原地帯パークチョンでは、昼夜の寒暖差や水はけの良い、ぶどう栽培に適した土地条件を活かし、1990年ごろから2軒のワイナリーでワインが醸造されるようになりました。また、近くにあるアジア最大級の規模を持つ酪農牧場チョクチャイファームでは、搾乳などの酪農体験や、アニマルショー、乗馬などが楽しめます。場内のレストランではステーキやフレッシュミルクを使ったアイスクリームが人気で、週末にはバンコクなどからの家族連れで賑わいます。
チョクチャイファーム

自然の美しさと仏教徒の伝統が受け継がれる
ウボンラーチャターニー

ウボンラーチャターニーは、東はラオス、南はカンボジアに接するムーン川に沿ったタイ最東部の都市です。国境沿いに断崖絶壁からの壮大な景観や先史時代の壁画、磨崖仏が点在しています。自然の美しさ、強い仏教徒の伝統とともに脈々と受け継がれている歴史や文化など、タイ東北部の魅力を五感で感じ取ることができます。
ウボンラーチャターニー

岩盤と森林に覆われたパー・テーム国立公園

パー・テーム国立公園は、岩盤と森林に覆われた高原に広かる340平方キロメートルもの広さを持つ自然公園です。断崖の上から見下ろすメコン川流域の景観は絶景で、季節になると岩の平原一面にさまざまな植物が花を咲かせます。公園入り口近くにそびえ立つキノコ型の岩は、表面に貝殻の化石が張り付いていて、古生代はここが海面下であったことを今に伝えます。なかでも見所は、断崖絶壁に描かれた壁画で、3000~4000年前の人々の生活を表したものが300以上発見されています。
パー・テーム国立公園

東北部で唯一インド様式を取り入れたワット・ノン・ブア

ワット・ノン・ブアは、1957年に建てられた東北地方で唯一のインド様式を取り入れた寺院で、ピラミッド型の仏塔には仏教にまつわる神話が描かれています。仏塔はインドのブッダガヤの大仏塔をモデルに建立され、高さ57メートル、幅17メートルの大きさを誇ります。夕刻になるとライトアップが施され、仏塔本体が美しい黄金色に輝きます。また、ナームアン村にあるワット・サー・プラ・サンスッは、ほとんどの建物が陶磁器で作られている寺院として有名です。入り口付近にある巨大な船は、昔、王と女王がジャパヤ川を下る時に乗っていたというものを再現しており、村の名物になっています。
ワット・ノン・ブア

「罠」という異名を持つケーンタナ国立公園

ケーンタナ国立公園は、クメール語で「罠」という名を持ち、メコン川とムン川の豊かな自然に囲まれた公園です。園内にはキャンプロッジも整備されており、近年ではエコツアーなども盛んです。入口正面には「Tana Rapids」(死の岩棚)と呼ばれる入り江があり、険しく切り立った岩底とその間に密生する木々のため、かつては多くの船がここで沈没したと言われています。休憩所には世界最大の石造りのテーブルとイスが設置されています。
ケーンタナ国立公園

点在するクメール遺跡を巡る拠点となるシーサケート

シーサケートは、鉄道線路の南北で雰囲気が異なります。シーサケート駅の北側は大衆的な食堂や売店が並ぶ古くからある町並みです。一方、駅の南側は銀行やデパート、ホテルなどが建ち並ぶ商業エリアになり、通りを行き交う自動車の数も多くなります。郊外には無数の遺跡群があり、なかでもアンコールワットよりも古いとされるカオプラヴィハーン遺跡では、壮大なスケールのクメール遺跡を間近に見ることができます。

かつては軍事要塞であったカオプラヴィハーン遺跡

カオプラヴィハーン遺跡は、カンボジア領ダンレック山脈の山頂に位置し、その特殊な立地条件から軍事基地、要塞としても使われていた遺跡です。タイとカンボジアの国境上にあり、境内はカンボジア領地ですが、タイ側のシーサケートからしか入ることができません。10~12世紀にかけてクメール帝国によって建立された寺院で、カンボジア大平原が地平線まで一望できます。近年は両国の領有権争いで軍による交戦もあり、仮に閉鎖が解除されても個人行動は避け、ガイド付きのツアーで訪れることをおすすめします。

遺跡を見渡す絶景の壁パー・モーイデーン

パー・モーイデーンは、カンボジア領の広大な平原と森林が広がる絶壁です。カオプラヴィハーン遺跡の駐車場から左側に延びる道を上がった所にあります。谷を挟んでカオプラヴィハーン遺跡とカンボジアの大平原を一度に見渡せます。岩壁には11世紀中頃に掘られたという3体の仏像を見ることができます。

死火山に広がる遺跡群とサーキットが共存するブリーラム

ブリーラムは自然豊かなコラート高原に位置し、その南にはドンレック山脈が広がり、カンボジアとの国境を有する都市です。県内のいたる所に死火山が分布しているのが特徴で、ほかの南イサーン同様にクメール王朝時代に建設された数々の史跡が残ります。また、近年では日本のGT選手権などのレースが開催されることでも知られ、大会期間中は多くの観覧者やレーシング関係者で賑わいます。

「大きな丘」に広がるパノムルン歴史公園

パノムルン歴史公園は17年に及ぶ復旧作業の後1988年にオープンした歴史公園で、死火山の山頂に位置し、最も保存状態がよいクメール遺跡です。パノムルンとはクメール語で「大きな丘」を意味し、晴天時には境内からカンボジアとの国境にあるドンラック山脈がおぼろげに見えます。ピマーイ遺跡と並び、最高峰の建築物と称されています。年1回15の戸口の間から朝日が直線的に差し込むよう設計されており、建築技術の高さをうかがわせます。
パノムルン歴史公園

砂岩で造られたムアンタム遺跡

ムアンタム遺跡は、11世紀に建設されたバプーオン様式の寺院です。パノムルン歴史公園のある死火山から南東に5キロメートルほど行った麓あります。建造物は砂岩で作られており、装飾にはテラコッタタイルが用いられています。回廊の四隅にはL字型の池が作られており五頭ナーガの彫刻が刻まれています。入り口の斜め向かいには小さな資料館があり、昔の遺跡の写真などが展示されています。
ムアンタム遺跡