3.タイ北部の知識

北方のバラとも称される、北部を代表するタイ第二の都市チェンマイの悠久の歴史を始め、荘厳で美しい世界遺産にも登録されている、「幸福の夜明け」を意味する古都スコータイ、北部独特の文化が今も残るラオスと隣接するチェンライ、山岳民族が暮らすメー・ホン・ソン、「古き良きタイ」の町並みが残るターク、雄大なジャングルが広がるカンペーンペッに関する基礎知識を学ぶことができます。

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「北方のバラ」と称される美しい古都、チェンマイ

タイ第2の都市チェンマイは、約700年前にランナー王朝として栄え、現在では「北方のバラ」と称される美しい古都です。1296年に初代メンラーイ王により新首都としてピン川のほとりに建設され、モン族やタイヤイ族、ビルマ族などさまざまな民族と交流するなか、「ランナー文化」と言われるタイ北部独自の文化・伝統を育んできました。現在でも工芸が盛んな街として知られ、街の中心を通るチャンクラン通りにはアジアン雑貨や伝統工芸品のお店がずらりと並び、毎晩、歩道上を露店が埋め尽くすナイトバザールで賑わいます。また、ウアライ通りでは、地元っ子にも人気のサタデーマーケットが開かれ、最近ではストリートパフォーマーが界隈を盛り上げます。ちなみに、日曜日には反対側のターペー門付近が歩行者天国となり、サンデーマーケットが開催されます。また、チェンマイの周辺は、緑豊かな峰々が重なる山岳地帯です。なかでも、ヒマラヤ山系に属し標高2565メートルを誇るドイ・インタノンは、バードウォッチングやトレッキングができるタイで一番高い山です。乾季(11月〜1月)は平均気温が約25度と平野部より過ごしやすく、涼しい気候を利用したバラや蘭などの花栽培が盛んです。

ワット・プラ・シン

堀と城壁に囲まれたチェンマイ旧市街

チェンマイ旧市街は、四方およそ1.5キロメートルのほぼ正方形の堀と城壁に囲まれ、多くの由緒ある寺院が点在しています。最も大きく格式の高い寺院として知られるワット・プラシンは、1345年にランナー王朝第5代パユ王が父王の遺骨を納めるために建立したものです。ワット・プラシンから徒歩数分のワット・ムーングンコンは、こぢんまりとしながらも美しい装飾が施された柱や優雅にそりあがった屋根などが特徴的な木造の本堂が、ランナー王朝を代表する建築として知られています。森の中にたたずむ静かな瞑想寺院であり14世紀末メンラーイ王によって建てられたワット・チェン・マンは、かつては王の宮殿として利用されていました。本堂にはソンクラーン祭りに登場する大理石の仏像「プラ・シーラー・カオ」と水晶の像「プラ・セータン・カマニイー」が安置されており、基部を15頭の象に支えられた仏塔も見応えがあります。

ワット・チェン・マン

ランナー王朝最初の首都であるウィアン・クム・カムは、チェンマイの南東約5km、車で約20分の所にあります。1984年には約20もの寺院が発見され、その仏塔などはランナー文化を今に伝える貴重な歴史遺産です。ランナー王朝の歴代王は、城壁の外にも多くの寺院を建立しました。その代表が、チェンマイ市街の西約15㎞にあり、標高1080メートルのステープ山頂に建つワット・プラ・タート・ドイ・ステープです。仏舎利を納めた高さ22mもある金色のチェディ(仏塔)が美しく、またチェンマイ市街を一望できる展望台にもなっていることから、この寺院への参拝をなくしてはチェンマイを訪れたことにならないとさえ言われています。

ワット・プラ・タート・ドイ・ステープ

伝統の技をいまに伝える チェンマイ郊外の魅力

郊外に目を向けると、伝統の技をいまに伝えるチェンマイの豊かな文化を実感できます。「傘の村」ボーサーンでは、紙を漉き、竹や糸で骨を組み、傘に花や鳥などの絵つけする、昔から変わらない手作業によってつくられる色とりどりの傘が人気です。もちろん、黄色いまゆと白いまゆから紡いだ絹糸で織り上げられる美しいシルクもチェンマイの特産品のひとつです。また、郊外の村バーンタワイでは、約70店もの工芸ショップが集まり、木工工芸作家たちの作業風景を見ることができます。最近では、国内外のデザイナーたちがそのようなチェンマイの伝統工芸に着目しています。ピン川沿いにあるチャルンラート通りは、それらをモダンなデザインに仕上げた雑貨や洋服を扱うおしゃれなショッピング通りになっています。ほかにも、チェンマイの北西にあるニマンヘミン通りにはモダンなデザインの雑貨などのギャラリーが集まっています。

「傘の村」ボーサーン

チェンマイ・スタイルの華やかなお祭り

チェンマイでは1年を通じてさまざまなお祭りが行われます。最も賑やかなのは、タイの旧正月を祝うソンクラーン祭。もともとは僧侶が寺院で水を掛けて身を清めて新年を祝ったことが始まりといわれ、「水掛け祭り」として親しまれています。なかでもチェンマイ流のソンクラーンは、パレードのほか、観光客も大勢参加して賑わうことで有名です。ほかにも11月のロイクラトンは川の精霊に感謝して灯篭を流すお祭りです。チェンマイでは灯篭のほかにも、天上の仏陀にそれぞれの願いを込め、コームローイという和紙でできた熱気球を夜空一面に飛ばすことで知られています。川面の灯篭と夜空の熱気球、それらの無数の明かりが織りなす幻想的なお祭りの夜は他では体験できないすばらしい旅の思い出となります。2月初旬の週末にはフラワー・フェスティバルが開催され、花で飾られた山車やミス・フラワーのパレード、園芸コンテストなどのイベントで賑わいます。涼しい気候を利用して蘭やバラなどの花栽培が盛んなチェンマイならではのお祭りです。

ロイクラトン

チェンマイで味わうタイ北部料理

タイ北部の料理を味わうのもチェンマイの楽しみのひとつ。バナナの葉で鶏肉・ナス・ハーブを蒸し焼きにしたホー・ヌン・ガイ、麺に水分の少ないミャンマー風のカレーをかけたカレーラーメンのようなカオソーイ、「チェンマイ・ソーセージ」とも呼ばれるレモングラスなどのハーブやスパイスが入った、チェンマイ名物のサイウア、豚の皮をカリッと揚げたケープムーなどは、街なかのレストランや屋台で楽しめる庶民的な北部料理です。伝統的な郷土料理にトライしたいなら、カントークがおすすめ。丸いお膳にナム・プリック・オーン(野菜に豚挽き肉のピリ辛ディップ)、ゲーン・ハンレー(ミャンマー風ポークカレー)など数種類の小鉢ともち米が並ぶこのスタイルは、ランナー王朝時代に貴族たちが客人をもてなすために始まったもので、伝統舞踊などとともに楽しめるレストランが人気です。

カントーク

ランナー文化の仏教寺院や庭園が広がる静かな街、チェンライ

チェンライは、ミャンマー、ラオスと国境を接するタイ最北の地であり、かつてタイ北部を統治したランナー王朝最初の都があった場所です。隣接するチェンマイなどと共に、現在も「ランナー文化」と称されるタイ北部独自の文化・伝統が色濃く残ります。市内には美しい寺院や文化施設が数多く残り、メコン川交易の核となる波乱の歴史を刻んだ古都チェン・セーンはランナー王朝時代の遺跡群が点在します。一方、自然豊かな山岳地帯には、さまざまな山岳少数民族や旧中国国民党軍の子孫などが暮らし、王室の別荘地があることでも知られています。

チェンライ

15世紀に建立されたワット・プラケオは、バンコクのワット・プラケオの本尊「エメラルド仏」が安置されていた由緒ある寺院です。また新しい観光スポットとしては、郊外にある純白に輝く彫刻のように美しい寺院、ワット・ロンクンがあります。新進気鋭の芸術家がライフワークとして建設したもので、ギャラリーで作品を見ることもできます。夜は、少数民族の露店が並ぶ賑やかなナイトバザールで、散策や食事を楽しむことができます。

チェンライ

隣国の文化が感じられるゴールデン・トライアングル

チェンライ市内から北へ約70キロメートルにあるゴールデン・トライアングルは、かつて世界最大のケシ栽培の地として知られ、黄金の三角地帯と呼ばれた地域です。タイとラオスを隔てるメコン川と、タイとミャンマーを隔てるルアック川が合流するエリアです。近年では川沿いを中心に隠れ家的な高級リゾートもオープンし、古都チェン・セーンやラオスのドーンサオ島などへ遊覧するボートも出ています。タイ最北端の町で、陸路でミャンマーと結ばれているメー・サイは、果物や乾物、宝石などを売りに来る商人たちで賑わいます。市場には、食料品や衣料品といった生活必需品が並び、行き交う人々の活気があふれています。丘の上に上がると、国境の向こうの景色が、まるで同じひとつの街のように見えます。

ゴールデン・トライアングル

イギリス式庭園が美しい御用邸 ドイ・トゥン

ミャンマーとの国境すぐ近く、標高2000メートルの山頂にお釈迦様の骨が納められているという塔がそびえる山、ドイ・トゥンがあります。その南に延びる尾根沿いには「メー・ファー・ルアン」と呼び親しまれた故皇太后の別荘があり、王室関係者の滞在時以外は見学することができます。皇太后によって造成されたきらびやかなフラワーガーデン「スワン・メー・ファー・ルアン」は、王室プロジェクトのひとつとして建設されました。皇太后はこの地で、森林保護と山岳民族の問題に取り組み、現在は、コーヒーや野菜などの農産物や、和紙作りや織物などの工芸品が「ドイ・トゥン」ブランドとして、世界に販売されています。

ドイ・トゥン・パレス

ミャンマー文化の香り漂う山あいの街、メー・ホン・ソン

タイ北部の西端、ミャンマーとの国境にあるメー・ホン・ソン。深い森の中は、乾期には霧が立ちこめて幻想的な風景になります。チャン族やカレン族、モン族など山岳民族が共に生活し、寺院の建築様式、祭り、食べ物に至るまで、隣国ミャンマーの文化の影響を受けています。太平洋戦争中に旧日本軍が駐屯したという歴史を伝える施設があり、日本人にとってもゆかりのある土地です。また、チェンマイからメー・ホン・ソンに向かう山岳地帯には、美しい自然が広がる街、パーイがあり、新たな観光エリアとして、世界中から観光客が訪れます。

メー・ホン・ソン

毎年11月中旬から12月上旬は、メー・ホン・ソンの北クンユアム方面にあるドイ・メーウーコーという山でブアトーン祭りが催される季節です。見渡す限り咲き誇るブアトーン(メキシコヒマワリ)で辺り一面が埋め尽くされる景色は壮観。周囲には屋台が出て、多くの人々が花見を楽しみにやってきます。また、3月下旬から4月上旬にかけては、シャン族の少年らが「サン・ロン(小僧)」になるために、華やかな衣装を身にまとって街なかを練り歩く宗教儀式「ポイ・サン・ロン」が行われます。どちらもメー・ホン・ソンならではのお祭りです。

ドイ・メーウーコー

花馬車が行き交う木造家屋の趣ある街並み ランパーン

東南アジアの先住民族として、紀元前より独自の文化を持っていたのがモン族です。そのモン族によって開かれたランパーンは、後にクメールやランナー、ビルマの各王朝による支配を受け、さまざまな文化の影響が色濃く残る街です。街の中心を流れるワン川が木材の輸送に用いられ、その後の鉄道の敷設や町の発展につながりました。旧市街に残る二階建ての木造家屋は、歳月を経てより趣を増し、城壁や砦の遺跡、ランナー様式の寺院と共に、歴史的な遺産となっています。小ぢんまりとした町なかを移動や散策をする際には、街の空気を肌で感じられる、名物の花馬車がおすすめです。

ワット・プラ・タート・ランパーン・ルアン

1914年、ランパーン王族最後の国主が初めて馬車をこの地に持ち込みました。今ではランパーン観光の名物として移動や観光に小型の馬が活躍し、タイ国内で唯一馬車の走る町として知られています。ゆっくりと進む馬車から眺める寺院や古い街並み、人々のざわめき、市場の匂いなど市民の普段の暮らしを体感できるのも魅力です。19世紀初頭、イギリス人商人に伴ってミャンマー出身の職人たちがランパーンへやってきました。彼らは町の至るところにビルマ様式の木造寺院を建てました。美しい色彩と調和のとれた、精緻な彫刻が施された木造の何層にも重なる屋根には、目を見張るものがあります。

ランパーンの花馬車

象と人の歴史を知る、世界唯一の「象の病院」

ランパーンにあるタイ象保護センターは、かつて木材の運搬など林業の労働力だった象を保護し、人工授精や栄養学など象に関する学術研究や、象使いの技術を継承するための施設です。木材運搬や沐浴の様子、訓練された象のお絵描きなどのショーを見学することができます。敷地内には世界唯一の象の病院があり、傷ついたり病気になった象が治療を受けています。日本映画「星になった少年」のロケ地としても知られる、象使いの生活を体験するホームステイもでき、象と人が共に生きてきたタイ独自の文化に触れられる貴重な場所となっています。

タイ象保護センター

「幸福の夜明け」と共にタイの文化が花開いた街、スコータイ

バンコクから北へ約440キロメートル、タイ北部の南端に位置する古都スコータイ。「幸福の夜明け」を意味するその名のとおり、1238年にタイ族による最初の王朝が開かれました。強力な軍事力と「スコータイは美しい国ぞ、水に魚棲み、田に稲穂実る」と当時の碑文が謳ったような豊穣な大地を誇り、第三代王ラームカムヘーンの時代にはその勢力が絶大なものとなりました。近隣諸国はもちろん中国などとも積極的に関係を結び、また仏教の普及にも尽力して多くの寺院を建造、そこからタイの文化芸術の古典様式が花開き、タイの文字や文学が生み出されるなど現在のタイの礎を築きあげました。そんな当時の栄華を偲ばせる荘厳で美しい遺跡群は、東南アジアで最も価値のある史跡のひとつとしてユネスコの世界遺産にも登録されています。

スコータイ

悠久の歴史に思いをはせる、スコータイの遺跡群

三重の城壁に囲まれたスコータイ旧市街とその周辺には、大小200以上の遺跡が点在し、歴史公園として整備されています。城壁内のほぼ中央、王宮の西にある、スコータイで最も重要とされる王室の寺院がワット・マハタートです。スコータイ歴史公園内で最も大きく、見応えのある寺院です。クメール文化をもとに生みだされた独自の様式による寺院建築の数々は、遺跡となった現在でも往時の荘厳さを偲ぶことができます。また「スコータイ様式」と称される優美な曲線が特徴の仏像も見逃せません。広い歴史公園をゆっくり見て回るには、レンタサイクルが便利です。幻想的な夜間のライトアップもあり、昼間とは一味違う美しさを見せてくれます。

ワット・マハタート

世界遺産の街 スィーサッチャナライとカンペーンペッ

スコータイ王朝時代、政治的、経済的に重要な拠点として首都スコータイ、スィーサッチャナライ、カンペーンペッなどの都市が栄え、人やものが頻繁に往来していました。副王が住んでいたとされるスィーサッチャナライはスコータイに続く第2の都市として栄え、丘に囲まれたスィーサッチャナライ歴史公園には、当時の様子を伝える遺跡が点在しています。ここで作られる陶器・サンカローク焼きは、日本では「すんころく焼き」として知られており、当時東南アジアや日本へ盛んに輸出されていました。スコータイの南に位置する「ダイヤモンドの壁」という意味の街カンペーンペッは歴史的にも重要な都市で、14世紀スコータイ周辺の要塞都市として機能していました。仏教の布教に熱心だった代々のスコータイ王は、これらの都市の至るところに仏教寺院を建造し、現代に残ったそれらの遺跡が美しい歴史公園として整備されています。いずれもその希有な歴史的価値や芸術的価値が認められ、1991年にユネスコ世界遺産に登録されました。

サンカローク焼き

灯篭と熱気球の灯りに包まれる幻想的なお祭り、ロイクラトン祭り

スコータイでは旧暦12月の満月の夜(11月初旬)、バナナの葉でできたクラトン(灯籠)を川に流して川の女神に感謝するロイクラトン祭りが行われます。スコータイはその発祥の地といわれ、毎年この時期になると世界各国から観光客が訪れます。見どころは、ライトアップされた歴史公園を舞台に行われる歴史劇。劇のクライマックスとともにコームローイ(熱気球)や花火が夜空に浮かび上がる光景は、幻想的な美しさです。タイ国の英雄タクシン大王の出身地であり、カレン族などの少数民族が住んでいる街タークで古くから行われているロイクラトン祭りも有名です。ピン川の川面を数千の灯籠が流れるその光景は、まるで天の川のようだと評されています。音楽や踊りとともに、村ごとに灯籠流しの美しさが競い合われ、村人の手作りのお祭りからは、地方ならではの素朴さと深い信仰心を垣間見ることができます。毎年陰暦12月の満月の夜(太陽暦では10月下旬〜11月中旬)に催されます。

ロイクラトン祭り